鑑賞時の目線を設計する

展示方法

高さは、展示が観客からどのように見えるかを決定する大事な要素です。

ギャラリーなどでは一般的に、絵画などの平面・壁掛け作品の高さは「身長160センチ前後の人の視点の高さ、140~150センチに作品の中央やメインがくるように」とされています。

このとき、子供や車椅子の人・背が低い人や高い人など、多様な人の視点についての検討がなされていないことも少なくありません。

また、美術館では人気の作品を少し高めに設置し、一度に作品を見ることができる人数を増やす、といった工夫を行っていることもあります。

これらのことからもわかるように、作品展示において一概に「この高さにすればいい」といった決まりはありません。

作品自体の制作と同様、しっかりと検討し、取捨選択を行うといいでしょう。

こんな時に考える

まずは展示環境を確認しましょう

作品を設置する高さは、照明の配置や強さ、釘打ちの可否やピクチャーレールの有無など、展示環境の条件に大きく左右されます。

なるべく早めに展示環境を確認し、設置方法や照明プランなどと一緒に考えておくといいでしょう。

特に民家・商業施設・学校など、非展示用空間では注意が必要です

非展示用空間では、光量不足で照明を自ら準備しなければならない、壁への設置が難しく展示台やイーゼルを使わなくてはならない・強い反射光のため額装や表面加工を変更しなければならない、など、様々な事態が起きえます。

ギャラリーや美術館と違い、スポット照明などの対応機材もないことが多いです。より早期での環境確認や、設置計画・目線や導線の検討が必要です。

考慮するポイント

  • 鑑賞者の身長・目線(子供・車椅子の人などへの対応を含む)
  • 平面作品などで、照明が反射し見づらくななっていないか
  • 平面作品などで、水平・垂直が正しくとれているか
  • 足元や他作品の観賞位置など、導線の安全性との兼ね合い

こんな作品がある

作品例準備中

だいじょばないポイント

「想定する観客像」によって、かならず誰かを排除してしまうことに注意しよう。

「誰かに対して見やすい高さは、他の誰かにとって見づらい高さ」だということがままあります。

よほど資金が潤沢であるとか、公共性の高い展示でもない限り、展示設計自体がなにがしかの排除を伴ってしまうので、そのことを意識した上で、対策や対応を検討していきましょう。

目線の設定・誘導等によって事故が起きないよう注意しよう。

展示会場では、足元への注意が非常に疎かになりやすいです。

作品を見上げていたら足元のケーブルや段差につまずいた、大きな作品の全体を見るために後ろに下がっていたら他の人とぶつかった…などは、展示会場で非常によく起きるトラブルです。また、搬入時に使用した釘や画鋲など落ちており、それに気づかず鑑賞者が踏んでしまう、といったトラブルもよくあります。

どれも転倒や怪我につながりやすく、目線や導線の設定と鑑賞者への配慮によって事故の可能性を下げられることでもあります。これらには十分に注意しましょう。

できればさまざまな属性を持つ複数人で、鑑賞のシミュレーションなどを行いながら、設定・検討していくとよいでしょう。

展示する高さや目線誘導の決め方

手順

①作品の中心点や、メインとして見て欲しい部分を設定します。

②鑑賞者の視点の高さや、見て欲しい状態を想定します。

③先ほど想定した鑑賞者の視点の高さや、見て欲しい状態をなるべく再現しつつ、作品の位置や高さを調整します。

この時、作家自身が鑑賞者役となり、位置や高さの調節は誰かに手伝ってもらえるとベストです。

④光の反射や逆光・導線に無理がないか、他作品の鑑賞を邪魔をしないか、なども意識して決めていきましょう。

⑤また、この時にも、様々な身長の人からの見え方を同時に検討してみましょう。

作品の材質によっては作品に光が反射しすぎてしまい、見えづらい位置が必ずあります。どこで見えなくなるかをこの時に把握するとよいでしょう。

⑥高さが決まったら、目安となるところに印をつけましょう。

壁に跡の残らないマスキングテープなどが便利です。

⑦先ほど決めた高さになるよう、設置します。

⑧最後にもう一度見え方や安全性を確認し、問題がなければ完了です。

記事制作協力

近藤銀河 Web Twitter note

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